JPEAから光発電No.40(非売品)が発行されたので読んでみた。いろいろといい事が書いてあったので、備忘録も兼ねてアップしておきます。私の感想は『→』以下の部分になります。
表紙のことばより
『電力システム改革に関する欧米の情報においては、1年前は江戸時代、10年前は考古学の世界』とのこと。
特集1 主役に躍り出た再生可能エネルギー
国連環境計画・金融イニシアチブ 特別顧問 末吉竹二郎
『化石燃料のコストは需要が決める。RE は技術、イノベーションが決める。』
→再生可能エネルギーのコストが劇的に下がり、その結果、更に需要を生み出し、イノベーションが加速するという好循環に入っているという内容が印象的。
カリフォルニアのZero emission vehicle など、低炭素化から脱炭素化の世界が始まっており、Co2排出への取り組みがますます盛んになっている。
背景として、英国NGO Carbon Tracker が温度上昇を、2℃以内に抑えるには残されたCo2排出量は、5650億トン。
全ての確認埋蔵量を掘り出し燃やすと、2兆7950億トンとなるため、もはや大部分が掘り出せない。
ノルウェーの国民年金基金などは、化石燃料に対して投資資金の引き上げを始めた。
→こうなると市場は再生可能エネルギーに向かわざるを得ないと、ひしひしと感じる。
特集2 日本が目指すべき電力システム改革~太陽光発電普及の視点より~
京都大学院 経済学研究科 特任教授
豊田合成株式会社 取締役
山家公雄
長期エネルギー需給見通しでは、2030年時点で再生可能エネルギーは22~24%、原子力20~22%の内訳が発表されている。
再エネ内訳。水力8.8~9.2%、太陽光7.0%、風力1.7%、バイオマス3.9~4.6%、地熱1.1%。
EU では現時点で約3割が再エネ、2030年目標は46%と日本の目標は低いレベル。
再エネのなかでも安定的に発電できる地熱、水力、バイオマスはFIT 価格を維持だが、気象条件で変動しやすい太陽光、風力は当初より半額となり、本見通しでは強引に抑え込まれた。裏を返せば開発余力が残っており、状況次第では上方修正可能。
系統への接続は先着順であるため、実際に稼働していなくても容量に空きがなくなれば、増強工事が必要で事業者負担となっていた。
欧州では送電会社負担が基本の欧州とは異なる点。日本でも入札制度の導入が規模によって導入されている。
→入札制度や、未稼働案件の取り消しなどで徐々に是正されていっていると思う。
前述の仮押さえ、契約上の容量積み上げによる計算、非稼働時でも使われている前提など、保守的な運用のため系統の利用率が低いことが分かってきている。
また揚水発電所の活用も地域によってバラつきがある。九州の小丸川揚水発電所は活躍している。
→揚水発電設備の利用の仕組みの整備が必要とはどういうことだろう?
再エネ普及のためには新規参入者が活躍できる場所が必要。
電力会社は発電、送電会社に分離し、電力の卸市場が整備されることで条件が整う。送電会社は中立のインフラ会社となることが必要。
卸市場では限界費用の低い方から落札される。燃料費不要の再エネについては確実に落札される(これが火力発電所の設備利用率低下につながる模様)。
貫徹委員会にて卸市場の議論がなされている。しかしながら、既存の発電所からの電力を販売できるベースロード電源取引市場の議論がなされている。
本来であれば、全体需要-再エネ=既存発電所による電力(これを、ネットロードと呼ぶ)となるはずが、既存発電所が自由化にも関わらず、現行の総括原価方式に近い市場で販売できるとなれば、先渡し市場やスポット市場に電力が出てこずに卸市場骨抜き化の影響が出てくる。
→現行発電所の固定資産コスト回収の仕組みや配慮は必要だが、上記市場は『過渡的』との文言なしとのこと。火力発電所の売却は簿価よりも高く売れるケースが多く、原子力については自由化後も設備利用率向上、運転期間延長で杞憂に終わったとのこと。(アメリカのことか?)
容量市場と呼ばれる供給予備力の市場整備も議論されている。あくまで予備力のため、市場はミニマムにしておかないと過剰設備、国民負担の増大につながってしまう。
テキサス、卸市場の需給調整機能で対応可能。
ドイツ、戦略的予備力を確保し、容量市場は作らず。
ニューヨーク、容量市場あるが、半年程度の入札期間のため、実態は先渡し取引。
容量市場は本当に日本に必要なのか議論が先決。卸スポット市場が3%弱という取引量を拡大するのが先決。
→再生可能エネルギーの導入には電力自由化とセットで考える必要があることが不可欠な理由が分かって非常にタメになった!
電力を売れるようになったといってもどこに売るのか、市場が平等に公開されていないと発展は難しい。自分の中のハードルが下がったので、今後はこの分野も踏み込んでいこう。
特集3 太陽光発電における国際標準化の最新動向
~グローバリゼーションとローカリゼーションの狭間で国際標準が果たすべき役割~
国立研究開発法人産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所
上席イノベーションコーディネータ
International Electrotechnical Commission TC82 (太陽光発電エネルギーシステム)国際議長
近藤道雄
→TC82 にて、日本人で2人目の議長とのこと。
国際標準規格について、グローバリゼーションに果たした役割とその課題、今後の進むべき姿について論じられている。
→標準化の意義について下記にまとめられているとのこと。PDFが18個もあるので、そりゃ、まとまっているかと。。。
規格とか、標準って無味乾燥なイメージがあって敬遠しがちなのですが、これらが拠り所ということに転職してから気付きましたw
また、そのうちに読んでみます。
http://www.jsa.or.jp/stdz/edu/dtm/bunya-1.html
TC82は1981年に米国が幹事国として設立。現在は49ヶ国がメンバー。発行規格90件、審議中69件(2017年3月1日現在)で、最も活動が活発なTC。太陽光産業が活発であることを意味する。
IEC 61215設計適格性確認と形式認証に関する規格(JIS 8990が国内規格)
IEC 61730では、高電圧、高電力に対しての安全規格。
ジェット推進研究所(JPL )が行った太陽電池アレイのプロジェクトがベース。
1975~1990までに基礎的な知見が集約され、現在のIEC 規格の基礎が形成された。
https://www2.jpl.nasa.gov/adv_tech/photovol/Pub_blockbuys.htm
→上記リンクからは60本以上の文献がダウンロードできてしまう。
当時は、日本ではサンシャイン計画のもとで太陽電池の本格的技術開発が始まったところ。
IEA Task13より太陽電池の信頼性に関するレポート
太陽電池の故障モードは、初期、中期、摩耗の3つに分類。11~12年後のモジュール故障率(製造者の保証基準を満たさない)は、2%程度。20年後も故障率は10%に満たないことを示唆。発電量で考えると年率低下0.5%以下。長期使用に対する耐久性は担保されている状況。標準化の貢献が多大とのこと。
→故障していなくても、20年後は10%程度発電量ダウンするのね。
前述のJPL プロジェクトで温度サイクル試験を50回から200回に増やし、結露凍結試験の厳格化、ホットスポット試験が追加された。
旧基準、10年間のモジュール故障率45%
新基準、10年間のモジュール故障率0.1%
IEC 61215でも温度サイクルは200回と定められている。
→設計基準の変更が信頼性向上につながる事例。先人の努力に感謝ですm(_ _)m
消費者庁、重大事故データバンク
モジュール発火発煙事故15件程度。パワコンも事故件数が増加してきている。
安全性は今後規格の重要なテーマになっていくことが予想されている。
→筆者曰わく、真のグローバリゼーションは単一市場の形成ではなく、多様な価値を包含する市場形成と多様な技術がそれぞれに競争できることであると考えているとのこと。
インダストリー4.0のように多様な製品を低コストで製造できる高度化された製造技術、情報技術が支えるであろうとのこと。
内容が濃いので備忘録兼ねての記載はここまで。以下はタイトルのみ。どんぶり飯が3杯はいける内容でしたw
政策1 改正FIT法施工と今後の課題
経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課
政策2 太陽電池発電設備の安全対策について
経済産業省 商務情報政策局 商務流通保安グループ 電力安全課長 後藤雄三
解説1 欧米の再生可能エネルギーの現状と日本への示唆
一般社団法人海外電力調査会 調査部門長 飯沼芳樹
解説2 広域系統長期方針について
電力広域的運営推進機関 理事 寺島一希
解説3 自然エネルギーの導入拡大に向けた系統運用~系統接続、広域運用の日欧の比較から~
公益財団法人自然エネルギー財団 上級研究員 分山達也
解説4 パワーコンディショナ力率一定制御と標準的な力率値
太陽光発電協会 高密度連系部会長 田中清俊
解説5 太陽光発電システム保守点検ガイドラインについて
日本大学 理工学部 教授 西川省吾
太陽光発電システム保守点検ガイドライン(Guideline on maintainance of PV systems)
2016年12月28日に公開
附属書E にて、I-V 曲線形状について、6パターンを示しているとのこと。
要チェック
解説6 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの導入支援事業と普及拡大に向けて
一般社団法人環境共創イニシアチブ 審査第2グループ グループ長代理 藤本好弘
ZEH ロードマップによると建築補助は2017年度以降は(必要に応じて)限定的な延長とあるため、縮小方向。
消費削減率、太陽光、蓄電池の容量など興味深い
解説7 上場インフラファンド制度の概要~再生可能エネルギーを中心に~
株式会社東京証券取引所 上場推進部 調査役 弁護士 佐藤晃子
解説8 世界の太陽光発電最新動向
株式会社資源総合システム 調査事業部長 貝塚泉
解説9 2016年度のPV搭載住宅関連テーマの総括
積水化学工業株式会社 住宅カンパニー 広報・渉外部 技術渉外グループ長 塩将一